深海3572mに生きる に登場する生きものたち
 4年間に記録された生きものは70種類を越えました。魚類7種、棘皮動物13種、節足動物16種、環形動物6種、軟体動物15種、刺胞動物8種を確認しました。

 普段、深海底は太陽光が全く届かない真っ暗闇の世界です。しかし、浅い海に暮らしていた時代の行動の名残りを見せてくれる生きものもいます。
↑ソコボウズ ↑左、隠れ蓑を背負ったカニの一種、ホモラ科の仲間 ↑海底に半身を埋めたツバサシロウリガイと巻貝

 シロウリガイは、ハオリムシと並んで熱水の噴出口付近に見られる典型的な深海生物です。室戸沖南海トラフ付近には熱水は噴出していませんが、シロウリガイが生息していることで、冷湧水の存在が証明されます。シロウリガイは熱水・冷湧水に含まれる硫化水素からエネルギーを得ることができるバクテリアを鰓に共生させています。
シロウリガイの体液にはヘモグロビンが大量に含まれるため、血液のような赤色をしています→
 この作品の大きな特長の一つは、深海生物の長期にわたる観察を初めて紹介していることです。シロウリガイの生死と、生きものが死んだ後の様子が詳しく紹介されています。また、コシオリエビの仲間については、同じ種の中での闘争行動や、体形の大きな種と小さな種の間の、退避行動や威嚇行動など、様々な行動が見られます。

 シンカイコシオリエビの脱皮は、4年間に3回観察されています。長時間にわたる現象なので、自由に暮らしている甲殻類の脱皮を見ることは、浅海においてすら非常に困難です。深海は捕食者が沢山いる環境でない証しでしょうか、コシオリエビたちは開けた場所で脱皮しています。
←脱皮するシンカイコシオリエビ

生きている者同士が食う食われるという捕食のシーンは見られませんが、脱皮殻や、死骸の奪い合いは、詳しく観察することができました。
←小型のコシオリエビ、ムニダ(左)とイトアシエビが死肉を引っ張りあっている 
     遊泳のための脚が発達したチヒロエビ→
この作品に関するお問い合わせ先
岩崎 望 
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